2019年12月22日から2020年1月1日までプラムヴィレッジ・タイランドに滞在し、
コア・サンガ・リトリート(2019年12月22日~25日)と
ホリデー・リトリート(2019年12月26日~2020年1月1日)に参加してきました。
2つのリトリートを通して、様々な体験、学びがありました。
その中で印象的だったものをシェアしたいと思います。
② タイ(ティク・ナット・ハン師)邸宅での瞑想体験(2019年12月26日)
4日間のコアサンガ・リトリートが終わり、今日からホリデー・リトリートが始まる。
ホリデー・リトリートの参加者は多く、前日から次々と人が集まってきた。
子供達やティーンエージャーも大勢やってくるので、瞑想ホールは一気に熱気を帯び、騒がしくなってきた。
午前中、瞑想ホールで休もうと思っても、環境の変化で落ち着いて休むことが出来ない。
瞑想ホールを離れて落ち着いた静かな場所を探す。
まずは、夕日の丘に向かったが、近づくと、人の笑い声が聞こえたので、そのまま通り過ぎた。
タイ(ティク・ナット・ハン師)の邸宅に向かうことにした。
タイは今、バンコクで治療中で不在だが、タイの邸宅はいつも静寂に包まれている。
せめて軒先でもお借りして休ませて頂こうと思った。
タイの邸宅に着くと、大勢の韓国サンガのメンバーがタイの邸宅に上がって、韓国人僧侶であるヨン師から説明を受けていた。
ヨン師は私を見ると、手を振ってくれて韓国サンガのメンバーに私を紹介してくれた。
そして、私に「タイの邸宅で瞑想しに来たの?良いよ、上がって」と手招きしてくれた。
ヨン師の言葉に甘えて、私もタイの邸宅に上がらせてもらった。
前回来たときは、下階までしか行かなかったが、今回は韓国サンガと一緒に上階まで上がった。
上階の廊下からガラス張りの部屋を見ると、おそらくタイが過ごしたと思われるベッドや椅子が目の前に見えた。
上階のバルコニーから前庭の美しい風景を眺め、椅子に座って、静かに休む。
やがて韓国サンガのメンバーも引き上げていった。
その後、一人の若者がサンダルを履いたまま、邸宅の中に入ってきた。
若者に優しく「靴を脱いでね」と注意すると、彼も気づいて従ってくれた。
若者もしばらくタイの邸宅で過ごしたが、やがて、いなくなった。
そうして、タイの邸宅の敷地内は前庭も含めて私一人になり、あたりは深い深い静寂に包まれた。
この深い静けさを味わっていると、邸宅の柱や廊下からタイのエネルギーが放たれているように感じられた。
そのエネルギーを感じながら、静かに座り呼吸をした。
もっとこのエネルギーを自分の中に取り入れたいと思った。
そこで、タイの部屋の目の前で、ベッドに向かって、大地に触れる瞑想(Touching the Earth)をすることにした。
静かに立ち上がり、合掌した手を、頭と口と胸の3カ所(身口意の三業)に順番に置いて、
そのまま五体投地の格好で廊下の床にひれ伏した。
できるだけ多くのエネルギーを取り込むために、チベット僧侶の方法で完全に身を投げ出した。
そして、心からの言葉を念じた
親愛なるタイ、
どうか私を助けてください。
私の中にはまだ多くの怒り、怖れ、絶望、悲しみがあります。
それら多くの怒り、怖れ、絶望、悲しみが
愛、喜び、平和へと変容することができますように、
どうか導き、助けて下さい。
私はこれまで多くの人達を傷つけてきました。
家族、娘たち、先生、友人、周りに住む人達、すれ違う多くの人達を傷つけてきました。
どうかお許しください。
そして、これ以上、彼らを傷つけることのないように、導いて下さい。
お願いです。どうか助けてください。
お願いします。
渾身の想いを込めて、祈った。
涙のしずくがポタポタと床に流れ落ちた。
すると、タイの邸宅の床や柱を通してタイの慈悲のエネルギーが私の身体に流れ込んできた。
ゆっくりと呼吸をしながら、そのエネルギーを身体の中に循環させていった。
本当に幸せな時間だった。
そうして、大地に触れる瞑想をしたあと、床に座って、座る瞑想を行った。
そんな時、ベッドの方からタイの声がはっきりと聴こえた。
微笑みなさい どんな時も
微笑みなさい 例え 困難や苦しみの中にあったとしても
内面の平和よりも 大切なものは何もありません
だから どんな時も 微笑みを忘れることの無いように
あなたが 微笑むとき あなたは本当に自由を手にしているのですよ
その言葉を受け取り、微笑みを浮かべながら瞑想を続けた。
しばらく経つと、タイの邸宅に住み着いている一匹の黒猫が私の元に近づいて来た。
猫は私のすぐ目の前で立ち止まり、ベッドの方向を向いて、静かに美しく座った。
まるで一緒に座る瞑想を実践してくれるかのようだった。
こうして、黒猫と一緒に座る瞑想を続けた。
黒猫が再び立ち上がり、屋根の上に登った。
時計を見ると、とっくに昼食の時間を過ぎていた。
黒猫に「一緒に瞑想をしてくれて、ありがとう」とお礼を言ってから、邸宅を後にすることにした。
ふと、邸宅の電灯を見ると、電灯に蜂が群がり、巣を作っているのに気づいた。
こんなに近くに蜂がいて巣を作っていたのに、一時間以上過ごしても一匹の蜂も私に近づいてこなかった。
きっと、この場所は特別な空気が流れていて、蜂も人間を怖れなかったのだろう。
タイの慈悲のエネルギーを頂き、遅い昼食を取りに、食堂へと戻った。
(Seiji@日光サンガ)