2020年1月13日月曜日

プラムヴィレッジ・タイランド 2019/2020リトリート参加報告(1)

2019年12月22日から2020年1月1日までプラムヴィレッジ・タイランドに滞在し、
コア・サンガ・リトリート(2019年12月22日~25日)と
ホリデー・リトリート(2019年12月26日~2020年1月1日)に参加してきました。
2つのリトリートを通して、様々な体験、学びがありました。
その中で印象的だったものをシェアしたいと思います。


① コア・サンガ・リトリートでのベルマスター体験(2019/12/25)

リトリート初日の夜のオリエンテーションで、オーガナイザー・チームの僧侶から、
「明日から3日間、午前中に法話があります。
その法話でのベルマスターを募集しています。やりたいと思う方は私まで知らせてください。」
というアナウンスがあった。

「自分もやってみたい」という気持ちが浮かんだが、すぐに立候補する勇気は持てずに、
そのまま静かに瞑想ホールを後にした。

その日の夜、夢の中で自分が僧侶から手解きを受けながらプラムヴィレッジで大きな鐘を鳴らしている夢を見た。
目が覚めた時に、その夢を思い出し、
「私は本当にベルマスターをやってみたいんだ」
という心の声を感じた。

そして、翌日の朝、アナウンスをしてくれた僧侶がシンガポール・サンガの女性と話しをしているのが目に入った。
きっと、ベルマスターのことを話しているのでは?と思ったが、まだ私は朝食を食べている最中だったので、目の前の食事に気持ちを集中させた。
朝食が終わり、お皿を洗って外に出ると、先ほどの僧侶が見えた。
私は思い切って僧侶に声を掛けた。

「昨日の夜、法話のベルマスターについてお話しされましたが、もう決まってしまいましたか?」
「いいえ、あと一人だけ決まっていません。3日目のシスター・ルンニェムの法話のベルマスターです。
 あなたはやってみたいですか?」
「はい!ぜひ、やらせてください!」
「日本のサンガの方ですね。じゃあ、お願いします」

そうして、3日目の法話のベルマスターをやらせてもらえることになった。
勢いで立候補したものの、よく考えてみたら、私は法話のベルマスターがどんなことをするのか全く知らない。

そこで、1日目と2日目の法話では、ベルマスターのすぐ隣に座って、ベルマスターの立ち振る舞いを横目で見ながら、
ベルマスターとしての作法を学び、吸収した。
例えば、
ダルマ・ティーチャーからの合図があってもすぐに鐘を招かずに、インバイター(鐘を招く棒)を両手で持ち呼吸に意識を向けること、
片手で鐘を招き、もう片手は合掌の形にすること、
鐘を招いた後は、再びインバイターを両手で持ち呼吸に意識を向けること、
3回鐘を招いたら、両手でインバイターを掲げて合掌、礼拝をすること、を学んだ。


さらに、瞑想ホールに人がいないときは、一人で鐘を招く練習をさせてもらった。
大きな鐘を招くのは初めてだったが、何度も鐘を招きながら、力の入れ方の加減を身体に沁み込ませた。

そして、いよいよ3日目のシスター・ルンニェムの法話の時間だ。
法話の前の歌う瞑想の時間に、大きな鐘の前に座った。
そして、シスターから「これから、ダルマ・ティーチャーをお迎えするために小さな鐘を招いて下さい」という合図があり、
私は小さな鐘を手に持ち、招いた。
鐘の音と共に、全員が立ち上がり、ダルマ・ティーチャーであるシスター・ルンニェムがやって来た。
2回目の鐘でお互いにお辞儀をした。しかし、3回目の鐘を鳴らす前に、ダルマ・ティーチャーがが話し始めた。
「3回目の鐘でブッダにお辞儀をするのでは?」と一瞬、焦りが生まれた。
「もしかしたら、私の鐘のタイミングが遅かったのかな?」と、不安が募った。
だが、次に大きな鐘を招くタイミングを逃さないように、ダルマ・ティーチャーの方に意識を集中させることにした。
しかし、ダルマ・ティーチャーは法話を進めて、なかなか大きな鐘を招くタイミングが来ないようだった。
集中力を保ち続けて、その時が来るのをじっと待った。

そして、ついにその時が来た。
ダルマ・ティーチャーが「それでは、鐘の音を3回聴きながら、呼吸に意識を向けましょう」という言葉と共に、
優しい微笑みを浮かべながら私の方を向いて、「どうぞ」と言うように、手を差し出してくれた。

その合図を受け取り、まず合掌して、両手でインバイターを持ち、静かに呼吸に意識を向けた。
目の前でダルマ・ティーチャーは微笑みを浮かべながら静かに座っていた。
左手で合掌し、右手でインバイターを持ちながら、ウェイクアップの合図を送る。
そして、吸う呼吸と共に、右手のインバイターを持ち上げ、吐く呼吸と共にインバイターで鐘の音を招いた。
鐘の音の余韻を聴きながら両手でインバイターを持ち、再び呼吸に意識を向けた。
そして、再び左手で合掌し、右手でインバイターを持ち、吸う息、吐く息に乗せて、さらに2回鐘を招いた。
3回の鐘を招いた後、両手でインバイターを掲げて礼拝した。

ダルマ・ティーチャーが優しい微笑みを浮かべて「ありがとう」と言ってくれたかのように私に合掌してくれた。


そして、再び法話が続いた。
法話の最後で、ダルマ・ティーチャーはこんなことを話してくれた。

 私達の人生の中には多くの困難があります。
 しかし、その困難は私達にチャレンジする大切な機会を与えてくれます。
 困難に直面しても、逃げることなく、微笑みを持って迎えましょう。
 そしてそのチャレンジを楽しみましょう。
 それこそが素晴らしいプラクティスなのですから。

その言葉が心の奥深くに届いた。
そして、2人の娘を育てる時に直面した困難と、それに必死に向き合う自分自身の姿が心に浮かんだ。

法話が終わり、ダルマ・ティーチャーの
「それでは最後に、鐘の音を3回聴きながら、呼吸をじっくりと味わいましょう」
と言葉と共に、静かに目を閉じた。

私はその合図を受け取り、合掌して、両手でインバイターを持ち、呼吸に意識を向けた。
そして、1回目の鐘の音を招いた。
目を閉じて、鐘の音を聴き、呼吸に意識を向けると、暗闇の中に、上の娘が姿が浮かんだ。
上の娘はとても優しい笑顔を浮かべながら、私に手を振った。

2回目の鐘の音を招いた。
目を閉じて、鐘の音を聴き、呼吸に意識を向けると、さらに下の娘の姿が浮かんだ。
2人の娘は、満面の笑顔で私に話し掛けてきた。
「パパ、ベルマスターできるなんて、すごいね!」
「応援してくれてありがとう、可愛い娘たち」
その2人の娘に微笑みながら、祈りを込めて3回目の鐘を招いた。

 この鐘の音が2人の娘の心に届きますように
 幸せと愛と平和の音が心の奥深くに届きますように

その時、私の呼吸と身体と心、そして鐘の音が一つになったような気がした。

1回目と2回目の鐘の音には少しの力みがあって、雑音が混じっていたが、
3回目の鐘の音には雑音が全く無く、調和のとれた美しいハーモニーのように感じられた。

その鐘の音を十分に味わい、両手でインバイターを掲げてダルマ・ティーチャーとブッダに礼拝した。
そして、小さなベルを3回招き、再び、ダルマ・ティーチャーとブッダに礼拝した。

すると、日本サンガのメンバーが、ダルマ・ティーチャーの元に駆け寄り、ハグをした。
ダルマ・ティーチャーは優しい笑顔で、彼女を包み込むようにハグをしていた。


きっと、この鐘の音が彼女の心の奥深くに届いてくれたのだろう。
その美しい光景を静かに眺めながら、ベルマスターを最後までやり遂げられたことに大きな喜びを感じた。


(Seiji@日光サンガ)

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